初期虫歯は削らなくていい?
初期虫歯は削らなくていい?
こんにちは!いろどり歯科です!
初期虫歯は削らなくていい?
はじめに
「虫歯になったら歯を削って詰め物をする」というのが、長らく一般的な虫歯治療の常識でした。しかし、近年の歯科医療の発展により、初期段階の虫歯に対しては「削らない治療」という選択肢が広がっています。「削らない」という新しい概念は、多くの方に希望を与える一方で、「本当に安全なのか」「いつまで削らずに済むのか」といった疑問も生じています。本稿では、初期虫歯に対する最新の治療アプローチを解説し、「削る治療」と「削らない治療」のメリット・デメリットを比較しながら、患者さんにとって最適な選択について考えてみましょう。
虫歯の進行段階を理解する
虫歯(齲蝕)は一夜にして大きくなるものではなく、段階的に進行します。治療法を考える前に、まずは虫歯の進行段階について理解しましょう。
C0(シーゼロ):初期エナメル質う蝕
肉眼では確認しづらい最も初期の段階です。歯の表面(エナメル質)に白濁や褐色の変色が見られますが、まだ実質的な欠損はありません。この段階では、歯の再石灰化(修復)が可能です。
C1(シーワン):エナメル質う蝕
エナメル質の一部が溶け始め、小さな穴ができる段階です。まだ象牙質には達していないため、通常は痛みを感じません。適切なケアによって進行を止められる可能性があります。
C2(シーツー):象牙質う蝕
エナメル質を越えて象牙質まで達した虫歯です。冷たいものや甘いものがしみるなどの症状が現れ始めることがあります。この段階からは自然治癒が難しくなります。
C3(シースリー):深在性う蝕
象牙質の深い部分まで進行し、歯髄(神経)に近づいた状態です。強い痛みを伴うことが多く、放置すると歯髄まで感染が広がる恐れがあります。
C4(シーフォー):歯髄炎・根尖性歯周炎
虫歯が歯髄まで達し、神経が炎症を起こしたり死んだりする段階です。激しい痛みや膿瘍形成などが見られることがあります。根管治療(いわゆる「神経を取る治療」)が必要になります。
初期虫歯に対する「削らない治療」とは
「削らない治療」が適応となるのは、主にC0~C1の初期段階の虫歯です。具体的にはどのような方法があるのでしょうか。
1. フッ素塗布
最も一般的な初期虫歯への対応がフッ素塗布です。フッ素は歯の再石灰化を促進し、エナメル質を強化する効果があります。歯科医院で行う専門的なフッ素塗布は、市販の歯磨き粉などに含まれるフッ素より高濃度で効果的です。
2. PMTC(Professional Mechanical Tooth Cleaning)
歯科衛生士による専門的な機械的歯面清掃です。通常の歯磨きでは落としきれない歯垢(プラーク)や着色を徹底的に除去することで、虫歯の進行を防ぎます。
3. シーラント
主に奥歯の溝に対して行われる予防処置です。溝を樹脂で封鎖することで、細菌の侵入や食べかすの蓄積を防ぎます。特に子どもの虫歯予防に効果的です。
4. レジンインフィルトレーション
比較的新しい治療法で、初期虫歯に樹脂を浸透させて進行を止めるものです。歯を削らずに白濁した部分を目立たなくする効果もあります。
5. 再石灰化療法
リン酸カルシウムやカゼインフォスフォペプチド-非結晶リン酸カルシウム(CPP-ACP)などの成分を含む薬剤を用いて、歯の再石灰化を促進する方法です。
「削る治療」と「削らない治療」の比較
では、初期虫歯に対して「削る」と「削らない」それぞれのアプローチにはどのようなメリット・デメリットがあるのでしょうか。
「削らない治療」のメリット
- 健全な歯質の保存:歯の構造をできるだけ残せるため、歯の寿命が延びる可能性があります。
- 痛みが少ない:麻酔や歯を削る音・振動がないため、治療に対する恐怖感や不快感が少なくなります。
- 治療時間の短縮:一回の治療が比較的短時間で済むことが多いです。
- 再治療リスクの低減:詰め物や被せ物がないため、それらの劣化や脱落による再治療の必要性が少なくなります。
「削らない治療」のデメリット
- 適応症の限定:初期段階の虫歯にしか適用できません。進行した虫歯には効果がありません。
- 定期的な管理が必要:効果を維持するためには、定期的な歯科検診や専門的ケアが必要です。
- 患者さん自身のケアが重要:日常的な口腔ケアの質が治療結果に大きく影響します。
- 保険適用外の治療がある:一部の削らない治療(例:レジンインフィルトレーション)は自費診療となる場合があります。
「削る治療」のメリット
- 確実性が高い:感染した部分を物理的に除去するため、確実に虫歯を取り除くことができます。
- 幅広い適応症:初期から進行した虫歯まで対応できます。
- 一度の治療で完結しやすい:適切に行われれば、その場で治療が完了します。
「削る治療」のデメリット
- 健全な歯質の損失:虫歯部分だけでなく、周囲の健康な歯質も一部削らざるを得ないことがあります。
- 痛みや不快感:麻酔注射の痛みや、削る際の音・振動に不快感を覚える方が多いです。
- 詰め物・被せ物の劣化:時間の経過とともに詰め物が劣化し、再治療が必要になることがあります。
- 二次虫歯のリスク:詰め物と歯の境目から新たな虫歯(二次虫歯)が発生するリスクがあります。
いつ「削る」べきか、医学的判断基準
「削らない治療」が注目される一方で、すべての虫歯に適用できるわけではありません。以下のような場合は、従来の「削る治療」が必要になります。
1. 虫歯が象牙質まで達している場合(C2以上)
エナメル質を超えて象牙質に達した虫歯は、自然治癒が難しく、進行も速いため、削って詰め物をする治療が基本となります。
2. 症状がある場合
冷たいものがしみる、自発痛があるなどの症状がある場合は、既に虫歯が相当進行している可能性が高いため、削る治療が必要になることが多いです。
3. レントゲンで確認できる虫歯
レントゲン写真で明確に確認できる虫歯は、通常、エナメル質を超えて進行しているため、削る治療の対象となります。
4. 過去に治療歴のある歯の二次虫歯
詰め物の周囲に発生した二次虫歯は、進行が速い傾向があるため、早めに削って対処することが一般的です。
患者さん自身でできる初期虫歯ケア
「削らない治療」の効果を最大化するためには、歯科医師の治療だけでなく、患者さん自身による日常のケアが不可欠です。
1. 適切な歯磨き
1日2回以上、特に就寝前の丁寧な歯磨きが基本です。フッ素配合の歯磨き粉を使用し、歯間部もフロスや歯間ブラシでケアしましょう。
2. 食生活の見直し
砂糖の摂取頻度を減らし、だらだら食べをやめることで、虫歯菌が酸を産生する機会を減らせます。また、食後に水で口をすすぐ習慣も効果的です。
3. フッ素製品の活用
市販のフッ素配合歯磨き粉に加え、フッ素洗口剤なども活用すると、再石灰化の促進に役立ちます。
4. 定期検診の継続
初期虫歯のコントロールには、3~6ヶ月ごとの定期検診が理想的です。小さな変化も早期に発見し、対処することが大切です。
削らない治療の将来展望
歯科医療の技術進歩は目覚ましく、「削らない治療」の選択肢はさらに広がっています。
1. 最新の再石灰化技術
ペプチドを利用した再石灰化促進剤や、特殊なガラス素材から放出されるイオンを利用した治療法など、新しい再石灰化技術の研究が進んでいます。
2. レーザー治療
特定の波長のレーザーを用いて、歯質を強化したり、初期虫歯の進行を阻止したりする研究も進んでいます。
3. 抗菌療法
虫歯の原因となる細菌を選択的に抑制する薬剤や、プロバイオティクスを活用した口腔環境改善法も注目されています。
まとめ:患者さんにとっての最適な選択
初期虫歯は、必ずしも「削る」必要はありません。特にC0~C1の段階であれば、適切な「削らない治療」と日常のケアによって、健全な歯質を保ちながら虫歯の進行を止められる可能性が高いです。
しかし、虫歯の進行状態、患者さんの口腔内環境、生活習慣などによって、最適な治療法は異なります。重要なのは、歯科医師と相談しながら、自分の状態に合った治療法を選択することです。
「削らない治療」を選択する場合でも、定期的な検診を欠かさず、歯科医師の指示に従った日常ケアを継続することが成功の鍵となります。また、状況によっては「削る治療」に切り替える必要があることも理解しておきましょう。
現代の歯科医療では、「できるだけ削らず、必要なら削る」というMI(Minimal Intervention:最小限の侵襲)の考え方が重視されています。患者さん一人ひとりの状態に合わせて、最適なアプローチを選択することが、長期的な口腔健康につながるのです。
虫歯治療に対する考え方は日々進化しています。「削るか削らないか」という二択ではなく、それぞれの患者さんに最適な治療を提供するという視点で、歯科医療を受けていただければと思います。
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